厚労省の資料によれば、18/19年の流行期(シーズン)における使用薬剤別の死亡例は、リレンザやイナビルなど吸入剤は0件。タミフルは推定使用患者数257万人中14件で、単純計算で18万人に1人の割合だ。ゾフルーザは427万人中37件で、12万人に1人。浜氏がこう語る。
「10代に限ると、タミフルは12.2万人中4人が異常行動後に死亡しており、3万人に1人です。09年の新型インフルエンザのとき、日本では約2千万人が罹患(りかん)し、198人が亡くなりました。死者はおよそ10万人に1人ですから、3万人に1人はその3倍です。この死亡率だと確実に効果のある抗生剤でも使用は厳しい」
こうした懸念に厚労省はどう答えるのか。
「死亡例についてはPMDAで調べています。ほとんどの症例が情報不足で、因果関係が判断できていません。もちろん因果関係がわかれば安全対策を行います」(医薬安全対策課)
耐性ウイルスの問題もある。18年3月に発売されたゾフルーザは、細胞に入り込んだウイルスの増殖を直接的に抑える作用がある。錠剤を1回飲めばよいことから、18/19シーズンに幅広く使用された。
ところが2シーズン目に入ると、耐性ウイルスの問題が注目された。耐性ウイルスは通常のものより感染力が弱いとされてきた従来の見方を否定するような研究が、発表されたのだ。
ゾフルーザは臨床試験の段階で、免疫力が十分発達していない小児において、耐性ウイルスが発生しやすいことがわかっていた。発生率は12歳未満で23.4%に達する。日本小児科学会は、「12歳未満の小児に対する積極的な投与を推奨しない」との指針を出した。
「死亡報告を見ると、敗血症や多臓器不全で突然死するケースが多い。免疫機能が低い高齢者にこそ効いてほしいのに、むしろ害が大きいと思います」(浜氏)
インフルエンザは基本的には自然に治る病気だ。浜氏は水分や睡眠を十分取ることが大切で、新型コロナも含め、解熱剤などを使うと重症化するリスクが高まると訴える。マスクはのどや鼻の粘膜の保温・保湿につながり有効だという。ウイルスを恐れるあまり、薬に頼りすぎることは避けたほうが良さそうだ。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2020年3月6日号