その頃から文章を書き始めていた僕は、“ヨシュア・トゥリー”に収録されている「終りなき旅(“I Still Haven,t Found What I,m Looking For”)」の歌詞の一節を初めての小説「発熱児童」の中で引用、U2に導かれる東京・吉祥寺の男子小学生の話を書いた。
これまで彼らのライブには何度も足を運んだ。
横浜アリーナ公演(89年11月、LOVE COMES TO TOWN TOUR)にはNYから帰ったばかりの妹と、06年のVERTIGO TOURでは主催局の事業部長として立ち会った。同時期に来日していたエリック・クラプトンもさいたまスーパーアリーナに姿を見せ、バックステージでクラプトンとボノが抱き合う奇跡の瞬間に遭遇する幸運に恵まれた。
2019年の暮れ、13年ぶりに来日したU2。
おそらくはボノの自筆であろうこんなメッセージが巨大スクリーンに映し出された。
「ベッドに入りラジオを聴いた/海賊放送(パイレーツラジオ)を聴いた/ラジオはすぐそこに横たわっている/ラジオは僕を歌に導いてくれる」
彼らのライブに集まったラジオ関係者全員がU2のメッセージに心を打たれたであろうことは想像に難くない。
※週刊朝日 2020年2月28日号