

作家・林真理子さんが週刊朝日で連載中の「マリコのゲストコレクション」が1千回を迎えました。記念スペシャルとしてお呼びしたのは、脚本家として数々の名作を生んだ橋田壽賀子さん。橋田さんがお金の使い道と「渡る世間は鬼ばかり」を書いた理由を明かしました。
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林:去年また船旅をしてらしたんでしょう? 今度はどちらにいらしたんですか。
橋田:グアム・サイパンのニューイヤークルーズ。その前は上海と蘇州に立ち寄るアジアクルーズへ行きました。
林:でも、旅の途中ですごい大病をなさったんですよね。
橋田:はい、去年の2月のアジアクルーズの途中、ベトナムで下ろされて入院しました。
林:ジェット機をチャーターしてお帰りになったんですって?
橋田:そうなんです。入院4日目に緊急にジェット機が迎えに来てくれまして。
林:チャーターすると2千万円ぐらいかかるんですってね。
橋田:2千何百万かかりました。
林:それ、ポンとお支払いになったんですか。
橋田:いえ、それが保険なんです。そのときだけの旅行保険だから2万円ぐらいしか払ってないのに、ほんとに保険会社に申し訳ないと思って(笑)。緊急のときのお医者さんと看護師さんがついて、気がついたら東京の病院でした。
林:お元気になられてよかったです。
橋田:でも、あのまま死ねたらよかったなと思って。もうなんの心残りもないんです。
林:このあいだ「NHKスペシャル」を見ましたら、点滴の中に薬を入れて、「皆さんありがとう。幸せでした」と言って眠ってるうちに息を引き取るというのをやっていて、私もこれがいいなと思いました。
橋田:そうなんですよ。でも、日本はダメですからね。安楽死が認められているスイスに行っても、いろんなチェックがあって、死なせてもいい人だとわかったら死なせるんです。
林:私の周りの人も、「あんなに楽に死ねるんだったら、そのためのお金をとっておきたい」と言ってました。
橋田:そうでしょう。どうして日本は許されないんでしょうね。「ダメなやつは死ね」ってなると、このあいだの相模原障害者殺傷事件(2016年)みたいなイメージを抱かれて、そんなことを載せたら炎上しちゃうんですよ。だから「安楽死を認めろ」なんて言っちゃいけないんですって。