佐々木:全然違います。蹴ろくろは、たまたま僕が習った陶芸家の先生が持っていて、工房の端っこに置いてあったんです。それを武正晴監督が「これ何ですか?」と見つけてしまった(笑)。「こうやって使うんです」と教えてくださったら、「面白いねぇ。これやりましょう!」と。足を使ってこれを回していると全部ブレるし息も切れる。集中して稽古をやらないとできないんですよ。でも、やっぱりそこができないと、本物の陶芸家に見えない。「気ばらなあかんな」という気持ちで、今回はここに集中しました。涼子ちゃんも茶道は大変だったでしょう?
広末:初めての茶道はもちろん、着物の所作も習いました。志野という女性は、ナンバー1ホステスで茶道家。なんだかわからないキャラクターですね(笑)。技術的に身につけなければならないものは茶道とたばこを吸うことだと思ったので、人生で初めて喫煙ルームに泊まりました。いろんな役者さんに「たばこは本当に吸っていないと、吸っている人たちから見たらわかるよ」と聞いたので、すぐに練習しました。
中井:それで喫煙ルームに泊まったの?
広末:はい。家でも外でもなかなか練習できる場所がなかったので、京都のロケに行った時だけだと思って。マネジャーにも「禁煙ルームで吸ったらダメです」と言われましたから(笑)。
中井:そりゃそうでしょ(笑)。
広末:たばこを吸う役は今までほとんどありませんでした。武監督に「しゃべりながら吸ってほしいし、吸いながらしゃべってほしいので練習してください」と言われて、これが役者の仕事だと改めて思いました。今回の現場は、こうして時間をかけて準備してきたことが「こんなに一瞬で終わるんだ」という思いでした(笑)。どなたもNGを出されないので、あっという間に撮影が終わってしまって、まるで舞台に立たせてもらったような緊張感とライブ感の中でお芝居ができて、毎日が楽しかったです。
――中井さんと佐々木さんの漫才のような息の合った掛け合い、広末さんをはじめ豪華な個性派俳優陣の化かし合い。二転三転しながら見る人をもだまさずにはおかないストーリー展開と、笑いの要素がたっぷり詰まっている。だが、人を笑わせるのは難しい。役者にとって、コメディーを演じる心持ちとはどこにあるのか。