米国が主導する有志連合への参加は見送ったが、バーレーンにある米海軍第5艦隊司令部で情報を共有することになる。事実上、米軍の傘下にあるのも同然だ。伝統的に友好関係にあるイランにも配慮して、活動範囲をオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾の3海域の公海に限定。イラン沖のホルムズ海峡やペルシャ湾は外していた。ところが、河野防衛相は17日の衆院安全保障委員会で、海上警備行動を発令した場合、ホルムズ海峡も排除しないとの見解を示した。

 安倍首相は昨年末、イランのロハニ大統領との会談で、海自の中東派遣について理解を得たと胸を張る。だが、イラン代理軍と呼ばれるイラクの「人民動員隊(PMF)」や、レバノンの「ヒズボラ」などのシーア派武装組織を支えたのは、暗殺されたソレイマニ司令官とコッズ部隊だ。米国の同盟国である日本にも敵対心を抱く可能性がある。

 これら武装勢力から攻撃を受けた場合、派遣部隊は備えができているのか。軍事ジャーナリストの清谷信一氏が指摘する。

「日本の護衛艦の死角は、高速ボートでの自爆攻撃など非対称戦を仕掛けられることです」

 2000年にアデン湾で停泊していた米駆逐艦コールが、スンニ派武装組織アルカイダの高速ボートによる自爆攻撃で大きく損傷したことがあった。

 清谷氏が続ける。

「その事件をきっかけに、各国の海軍は近接防御用にリモート・ウェポン・ステーション(RWS)というシステムを採用しました。船内から遠隔操作できる暗視装置付きの機関銃や機関砲などを多数搭載して、さまざまな方角から高速で接近してくる自爆ボートに対処できるようにしたのです。ところが、日本の護衛艦はRWSの採用が遅れており、派遣される護衛艦にも搭載されていません。昔の艦隊決戦さながら艦砲で撃つしかないのですが、遠くでなければ照準が合わない。命中すれば相手は木っ端みじんになってしまいますからオーバーキルです。必要な装備をして抑止につなげることが大事なのです」

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医官は1人?