今村翔吾(いまむら・しょうご)/1984年、京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。同作で歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年「童神」(刊行時に『童の神』と改題)で角川春樹小説賞受賞。他の著作に「くらまし屋稼業」シリーズほか(撮影/写真部・片山菜緒子)
今村翔吾(いまむら・しょうご)/1984年、京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。同作で歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年「童神」(刊行時に『童の神』と改題)で角川春樹小説賞受賞。他の著作に「くらまし屋稼業」シリーズほか(撮影/写真部・片山菜緒子)
この記事の写真をすべて見る
2019年ベスト10 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2019年ベスト10 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)

 週刊朝日恒例の「歴史・時代小説ベスト10」。2019年の1位は今村翔吾さんの『八本目の槍』に決定しました。これまでの石田三成像を覆す一冊です。今村翔吾さんに作品について聞きました。

【2019年「歴史・時代小説」ベスト10はこちら】

* * *
──第1位のご感想は?

 電話を頂いたときに思わず拳を握りしめました(笑)。昨年の2位も有り難かったですが、いつか1位を取りたいと思っていたので、むっちゃうれしいです。

──本作のアイデアはどこから来たのですか。

 小学校の同級生と集まったときに、彼らと会わなかった期間の、僕の知らない経験や時間の重みがなんとなく匂ってきて、言葉で語らなくとも理解し合えるような感じがしたんです。そのとき、「そういう関係は戦国時代にもあるかもしれない」と。

──それが賤ケ岳の戦いで武勲をあげた、秀吉方の武将「七本槍」たちの小姓時代の関係性なんですね。

 共に小姓時代を過ごしたからこそわかり合え、喧嘩しても翌日には仲直りしていたのが、大人になると、少しの行き違いが修復し難い関係に発展したり、そのまま一生の別れになったりする。それを描いたら面白いんじゃないか。一方で、石田三成を描きたいとずっと思っていたので、その二つが合体した感じですね。

──各章が「七本槍」それぞれを主体とした話となっていて、なおかつ三成も「主役」として描かれていますね。

 三成にあまりいいイメージはないかもしれないですが、私の住む滋賀県では逆に強く支持されている。全国では悪すぎ、滋賀県では良すぎ。良いも悪いもある等身大の三成を描くには、共に過ごした「同級生たち」の視点こそが有効ではないかと考えました。

──構成は書く前から決めていたのでしょうか?

 最後の市松(福島正則)の章以外は、だいたい決めていましたね。ただ難しいのは、7人それぞれを中心に各章を一つの作品としながら、なおかつ全体に、7品からなるコース料理のような、一貫したテーマを持たせなければならないこと。それにはやはり最終章が重要で、「頼むぞ! 市松」と、気合を入れてから執筆しました。でも小説って、真摯に向き合って作っていたら、決定的な何かを与えてくれるんですよ。最後にいいセリフが降りてきてくれて、「来たーっ」という感じでした。そういうときが一番楽しいです。

次のページ