これからは、どんどん進んでいくAIの横で堂々と自分の頭でものを考えることができる人間が必要になってくると思います。よりいっそう人間らしい「心」が必要になるからです。人生とは何か、仕事とは何か、自分とは何者か、生きるとは、というようなことを考えざるを得ないからです。自分の頭で考え、自分なりの答えを出していく力が必要なのです。

 そのような力をつけるためには、やはり読解力が必要となります。高校学習指導要領の国語の科目再編をめぐって「文学が軽視される」という懸念が報じられていますが、そのようなことは時代に逆行しているといえます。子どもたちには、あらゆる時代の、さまざまなジャンルの文学を読んで内省し、心を強くしてAIの時代を悠々と生きていってほしいですね。

 最近その肝心の子どもの読解力に関して、心配なニュースがありました。12月3日に、OECD(経済協力開発機構)が18年に実施したPISA(学習到達度調査)の結果を発表。79カ国・地域の約60万人の15歳を対象に実施したこの調査で、日本は「読解力」が3年前の調査の8位から15位へと急落していたのです。

 読解力は一朝一夕には身につきませんから、幼いときからの家庭学習や活字に触れる習慣が大切です。

 子どもに読解力をつけたいと思うとまず、本を読ませなければ!と思う親が多いのですが、塾などで忙しくて本は読めないのです。

 それで、現実的な方法としてオススメしているのが、新聞記事を毎日読むことです。毎日、新聞の記事を15分間読むことは意外と簡単。スポーツ、料理、学校関係などの記事は読みやすいと思います。15分を4日間続けたら1時間活字を読んだことになりますね。新聞を入り口にして、深い内容の本へと活字の世界を広げていくと楽しいですよ。

 また、子どもが自ら実際に経験できることは限られています。新聞は活字を通して、さまざまな年齢や立場の人の考え方に触れることができます。これは、ネットではなかなかできないこと。ネットでは自分の興味のあるニュースや話題しか読みません。自分の興味のあるジャンルを飛び越えて、多様な価値観に触れることは新聞ならではです。間接的にさまざまな経験ができ、それをもとにはじめて論理的に物事を考えられるようになり、しっかりした思考力が身につくのです。

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