ところが、一昨年民法が改正され、債権は請求可能となったときから10年または請求可能と債権者が知ったときから5年で消滅することになった。それに従えば、賃金債権の時効は5年だと解釈できる。この改正法の施行は来年4月だ。
賃金債権については労基法が優先適用されるので、今のままなら2年。これでは、労働者の賃金債権が他の一般債権よりも保護が弱いという不当なことが起きる。そこで、労基法を改正して最低でも5年に延ばすことが必要になる。連合などもこれを求めている。
しかし、この延長に経営者側が大反対した。現在は、3年まで延ばす案が有力である。さらに、有給休暇の取得権については、延長を全く認めず2年のままとする方向だ。延長反対の理由は、「中小企業が大変で可哀そうだ」という、「弱者保護」。しかし、それは建前に過ぎない。企業の利益優先で、一番の弱者である労働者の権利を無視しているのだ。
この議論の経過を見れば、アベノミクスの看板政策「働き方改革」も結局はただの人気取り政策だったことがよくわかる。労働者は騙されないように気を付けなければならない。
※週刊朝日 2019年11月22日号