ロイテリ菌(オハヨー乳業提供)
ロイテリ菌(オハヨー乳業提供)
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 11月8日は「いい歯の日」。歯周病の怖さはご存じだろうか? 歯茎が腫れ、悪くすれば歯が抜ける――くらいに考えている人が多いのではないか。実は、歯周病を引き起こす歯周病菌は、アルツハイマーや糖尿病を引き起こす因子となる菌なのだ。この菌から身を守るためには歯磨きも必要だが、菌をやっつける「スーパー乳酸菌」があるのだという。いま、この乳酸菌を使ったバクテリアセラピーが注目されている。

「歯周病菌の毒素は、歯茎の血管を伝って全身にまわります。みなさんが想像するより、ずっと恐ろしい菌なのです」

 そう警鐘を鳴らすのは、口内環境と歯の病気の関係について調査をしている、歯科医師の坂本紗有見さんだ。

「脳にまわれば、脳細胞を破壊してアルツハイマー病を引き起こす。肺に入れば、高齢者ならば誤嚥(ごえん)性肺炎に。また、糖尿病、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肥満、メタボリックシンドロームをはじめ、妊婦の早産や低体重出産などの大きなリスク因子となる、厄介な菌なのです」(坂本さん)

 にもかかわらず、その恐ろしさが一般の人に浸透しているとはいえない。

 歯周病を防ぎ、症状を改善するには日々の歯磨きが大切だが、歯周病菌は空気を嫌い、歯と歯茎のすき間にある歯周ポケットに入り込んでしまう。すると、歯ブラシでは掃除がしにくい。

 では、どうやって防ぐか。注目されているのが歯周病菌を抑制する口内細菌を接種するバクテリアセラピーである。

 腸内フローラ(細菌叢・さいきんそう)と健康の関係が何かと話題だが、口のなかにも数百種類の細菌がすみ着いている。口腔(こうくう)ケアでは、長い間、殺菌が主流だった。しかし、それでは歯周病菌や虫歯菌といった悪玉菌だけでなく、口のなかの善玉菌まで死んでしまう。そこで、腸と同じように細菌と共生して口内フローラを良好に保つのが、バクテリアセラピーだ。

 坂本さんによれば、乳酸菌のなかに、悪玉菌だけを狙いうちしてくれる、「スーパー乳酸菌」があるのだという。代表的なのが、海外で研究されてきた「ロイテリ菌」と、広島大学の二川浩樹教授が発見した「L8020乳酸菌」だ。

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ロイテリ菌とは