「即位礼正殿の儀」が華やかに行われる裏で、令和皇室には喫緊の課題がある。女性、女系天皇の可否、旧宮家の復活、女性宮家の創設など皇位継承問題だ。上皇さま退位をめぐる有識者会議で座長代理を務めた御厨貴・東大名誉教授と、憲法学者の石川健治・東大教授が語り尽くした。
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御厨貴(以下、御厨):私は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」メンバーとして、議論を重ねてきました。まず考えたいのは「象徴」について。天皇は最初からすでに象徴「である」のか、象徴「になる」のか。上皇さまのこれまでのご発言から考えると、象徴に「なろう」とした。
石川健治(以下、石川):象徴天皇制について、ほとんどの人が真面目に考えてこなかった。左側の人は、憲法に書いてあるんだから内閣総理大臣の任命など国事行為だけ行い、判子だけ押してそれ以外のことはするなという考え方。この立場は、天皇の象徴性をいかに維持するかについて、まったく考慮していない。象徴天皇制が先細りになって自然死を迎えたならそれで結構だと。昭和天皇であれば、千代田のお城で判子をついているだけでも、旧現人神としてのカリスマで象徴性の不足を補えたが、それ以降の天皇はどうしたらいいのか。一方で、右側の人は戦前の天皇制の残影を引きずっていて、現人神としての天皇は祀る存在でありさえすればよく、それだけで象徴性を保てると考えている。しかし、そもそも公の場で現人神としての姿を見せることは、憲法の政教分離原則で禁じられているので、このシステムも作動しない。そうなると、天皇自身は、憲法に適合する象徴を模索して、それらの真ん中を行くしかなくなる。誰よりも真剣に考えざるを得なくなったのが、初めて現人神としてではなく即位した平成の天皇、上皇さまだった。
御厨:だからこそ上皇さまは象徴としてのお務めをすべて引き継いでほしいと何度もおっしゃっているわけです。すでにできあがったもので、能力に関係なく、およそ普遍的な象徴としての中身だと言い続けた。