ラグビー・ワールドカップで日本代表が優勝候補の一角アイルランドを撃破した9月28日、日本各地に歓喜の渦が広がった。スタジアムで打ち振られる日の丸の旗が輝いて見えたが、一方で、その前日、日の丸を汚すような暗い報道に気づいた方はおられるだろうか。
【写真】経産省出身で首相補佐官と首相秘書官を兼任する今井尚哉氏
皆さんは、「日の丸連合」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。日本株式会社の総元締の経済産業省が、日本を代表する大企業を束ねて世界の一流企業と伍する企業を育てようというプロジェクトの俗称だ。
その代表が、半導体のエルピーダメモリとルネサスエレクトロニクス、そして、液晶のジャパンディスプレイ(JDI)である。
エルピーダメモリは、NEC、日立製作所、三菱電機のDRAMと呼ばれる半導体メモリーの事業部門を統合した企業だ。まさに「日の丸」のイメージそのもの。しかし、業績は不振が続き、経産省主導で再建に努めたが、結局、経営破たんして、米国の多国籍企業マイクロン・テクノロジー社に身売りした。完全なる失敗である。また、ルネサスエレクトロニクスは、やはり、日立製作所、三菱電機、NECのマイコンやシステムLSIの事業部門を統合した「日の丸連合」だが、これも不振が続き、経産省傘下の官民ファンド産業革新機構(現INCJ)の多額支援を受けざるを得なくなった。2010年発足以来4年連続赤字の後、14年度にようやく黒字化したが、19年4~6月期には、2四半期連続の営業赤字で再建は困難を極めている。
さらに、原発で躓いた東芝の経営危機(17年)に際して、同省は性懲りもなく「日の丸連合」方式での再建を目指したが、これも頓挫。結局、東芝の稼ぎ頭であるNAND型フラッシュメモリー部門を東芝メモリとして切り出し、外資連合に売り渡す羽目に陥ってしまった。大失態だ。
そして、9月26日夜には、またまた「日の丸連合」大失敗を象徴する出来事が起きた。前述したJDIの危機である。JDIは経産省の主導で、日立、ソニー、東芝3社の中小型液晶事業を統合して12年にスタートした会社だ。経産省にとっては、「日の丸連合」最後の砦と言っても良いだろう。産業革新機構などが多額の支援を行ったが、結局、債務超過に陥り、よりによって経産省の大嫌いな中国系ファンドに身売りということになったのだから目も当てられない。さらに、その中国系ファンドが手を引くというニュースが流れてお先真っ暗となったのだ。