もう一つ、見逃しがちなのが「舌の汚れ」だ。口臭外来を開設し、数多くの患者の口の臭いに対応してきた鶴見大学歯学部附属病院(横浜市鶴見区)口腔機能診療科准教授の中川洋一さんは、「舌が汚れていると、口臭の原因になりやすい」と指摘する。舌の汚れがイメージできない人は、鏡を用意。「あっかんべー」をして、舌を観察してみよう。舌の表面や根元の部分に白い苔のような“舌苔(ぜったい)”が付いていたら要注意だ。

「この舌苔の正体は、歯周病菌や上皮細胞がはがれて生じた“垢”のようなもの。歯周病菌というと歯と歯ぐきの間や周りに棲んでいる印象がありますが、舌の、特にあまり動かさない根元部分にも棲息しています」(中川さん)

 舌磨きといえば、ヘラのような形をして舌の汚れをかき出すアイテムなど、専用グッズが市販されている。だが、舌の表面をやみくもにゴシゴシこすってもダメだという。

「舌の表面は平らではなく、糸状乳頭で覆われて絨毯のようになっています。グッズで表面をこするだけでは、かき出せません」(同)

 正しい舌磨きのやり方は、まず奥から手前にかき出した後、次に手前から奥、左から右、右から左とあらゆる方向でこする。さらに、舌の根元や側面も軽く。ただし、舌の奥に器具を入れすぎると嘔吐反射が起こるので注意すること。

「専用のグッズでなくとも、水で濡らしたガーゼを人さし指に巻いて舌をこするだけでもOKです。ガーゼが黄色くならなくなったら汚れが取れた証拠。舌磨きは食後に毎回行う必要はなく、1日1回で十分です」(同)

 若林さんは、「高齢者では入れ歯が口臭の原因の可能性がある」と指摘する。入れ歯の歯ぐきの部分はレジンという素材でできている。顕微鏡で見ると小さな穴が無数に開いていて、そこに歯周病菌が入り込むため口臭が生じやすい。

「口臭予防で大事なのは、専用の入れ歯洗浄剤を使うこと。1日1回3~5分使うだけで、かなり殺菌できます。歯ブラシなどで磨くのはダメ。こすった部分に傷がつき、歯周病菌が入り込んでしまうからです。日々、手入れをしていても汚れが落ちなくなってきたら、歯科医院でキレイにしてもらいましょう」(若林さん)

 口の中以外の身体の病気が原因のこともある。体臭や多汗などに詳しい五味クリニック(東京都新宿区)院長の五味常明さんによると、胃腸の病気がある人は硫黄のような口臭が、糖尿病の人は甘い口臭が、肝臓や腎臓が悪い人は腐敗臭のような口臭がするという。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、扁桃炎などの病気でも口臭がきつくなるそうだ。ただ、この場合は病気を治すことが先決だ。

暮らしとモノ班 for promotion
疲労回復グッズの選び方は?実際に使ったマッサージ機のおすすめはコレ!
次のページ