帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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※写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「捨てることで自由になる」。

*  *  *

【ポイント】
(1)学問をするとさびしさに包まれてくる
(2)知識を溜め込んでいくと身動きができなくなる
(3)これからは捨てることでもっと自由になるべき

 山口誓子さんの句に、

「学問のさびしさに堪へ炭をつぐ」

 というものがあります。大学を出て20年ぐらい経った頃、この句を染めた手ぬぐいをいただきました。一目見て心に響き、表装して病院の外来ロビーにかざることにしました。私はこの句を見るたびになんとなく気が休まるのです。

 思い起こすのは、医学部に進学して毎晩、医学書に向き合っていたときのことです。まだ晩酌の習慣はなかったので、近くの食堂でさっさと夕食を済ますと、下宿に帰って勉強しました。医学は初めて接する学問でしたから、興味津々で楽しかったのですが、教科書を読み進めるうちに、そこはかとないさびしさに包まれてくるのです。

 あれは、何だったのでしょうか。膨大で深淵な知の大海に乗り出すときの、恐れのようなものだったのでしょうか。

 そういう気持ちにおそわれると、私は財布をポケットに入れて、夜の街に出かけるのです。近くには学生相手のトリス・バーや屋台のおでん屋さんがあって、私の心を癒やしてくれました。

 そういう経験がありましたから、「学問のさびしさ」の句が心に響いたのです。でも、この句を病院にかざったときには、「学問のさびしさ」の正体については、まだわかりませんでした。

 その疑問が氷解したのは、何年かして『老子』の第四十八章に出会ってからです。

 学を為せば日に益(ま)し
 道を為せば日に損す
 之を損し又(ま)た損して
 以て無為に至る
 無為にして為さざる無し

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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