林:そうなんですか。私なんか、伊藤忠の名刺を持って、飛行機に乗って出張に行って、英語でペラペラやってるのに憧れちゃいますけど。
澤田:僕もそう思っていた時期もあったんですけど、純粋に、お客さまに喜んでもらったり、現場の人が喜んでいる姿に直に接するほうが、自分に合っているし、人生幸せなんじゃないかと思ったんです。
林:コンビニもまだ黎明期ですか。
澤田:そうです。セブン−イレブンさんはけっこう出てきてましたけど。そんな感じで出会っちゃったんですよね、小売業と。
林:結局、伊藤忠をおやめになって、柳井(正)さんのユニクロ(ファーストリテイリング)にお入りになったんですね。当時ユニクロってどのぐらいの売り上げだったんですか。
澤田:400億円ぐらいで、利益が18億円。山口県にあって、広島証券取引所に上場している会社でした。
林:右肩上がりの倍々ゲームのころですか。
澤田:いや、僕が入ったときは既存店が3年連続ダウンしていて、株価も低迷していました。時価総額180億円ぐらいのときです。今は7兆円ですから、350倍以上の価値がついてますね。
林:あのころ株を買っていれば……。
澤田:1千万円が35億円ですよ。
林:ほんとですか。ひぇ~!
澤田:残念ながら僕は持っていませんが(笑)。この成長の渦中にいたのは、本当におもしろかったです。400億円が600億円、800億円、2千億円、4千億円になっちゃうわけですからね。
林:フリースのブームは社長がつくったんですか。
澤田:1997年にユニクロに入社して、98年の11月28日に都心型店舗の1号店を原宿にオープンしたんですが、僕はそれの責任者をやれと言われたんです。今のユニクロは本当にかっこいいブランドですが、当時は正直ダサかった。どうやってキャンペーンしようかと悩み続けて、「これだ!」とひらめいたのがフリースだったんです。それでキャンペーンをやったら大爆発しちゃったわけです。