有効性が認められたのは身長・体重の測定、血圧の測定、糖尿病検査、飲酒と喫煙に関する問診、うつ病を調べる問診の6項目だけだ。健診にかかる費用は巨額なだけに制度の意義が問われる。

 有効とされた糖尿病検査も、肥満などが原因の「2型糖尿病」の場合は要注意だ。『65歳からは検診・薬をやめるに限る!』の著者で、武蔵国分寺公園クリニック院長の名郷直樹さんはこう指摘する。

「糖尿病治療の本来の目的は、失明の大きな原因である網膜症や、腎症、心筋梗塞、脳卒中など合併症を防ぐことです。けれども、インスリンなどで血糖値を下げてもなかなか合併症は減りません。薬で無理やり下げると低血糖で意識障害などになる危険性が高まります。糖尿病の早期発見・早期治療の寿命に対する効果は、期待されるほど大きくはないことが、これまでの研究結果から明らかです」

 糖尿病は進行が遅く、治療をしなくても合併症にならない人もいるという。名郷さんが続ける。

「基準値(HbA1c4.6~6.2%)を目指すような厳しい血糖コントロールより、あまり神経質にならず7%台をキープしながらたまにはおいしいものを食べるのが、糖尿病との賢い付き合い方です」

 健康増進法に基づき、対策型で行われているがん検診は、胃がん、肺がん、大腸がん乳がん、子宮頸がんの5種類だ。なかには効果が期待しにくい検査もある。

 肺がん検診では胸部X線検査が行われているが、早期がんを見つけることはきわめて難しいという。前出の中原さんが解説する。

「もともと結核の発見に貢献してきた検査方法ですが、いまや結核患者が激減し、その目的を失っています。いつのまにか肺がんの早期発見という名目になりましたが、胸部X線では早期がんは見つけられず、むしろ放射線被曝のほうが心配です。CT検査では見つかる可能性は高まっても、被曝量はさらに増える。発がんなど健康被害リスクが高まります」

 胃がんもバリウムを飲む胃部X線では早期発見は困難で、やはり被曝のほうが不安だという。中原さん、名郷さんともに「個人で、内視鏡検査を受けるほうが確実」と口をそろえる。

 早期発見することが、「過剰診断」につながるケースも。前立腺がんや甲状腺がんなど進行の遅いがんは死に至るまで数十年かかる。その前に心筋梗塞や脳卒中など別の病気で亡くなることがよくあるという。65歳以上の高齢者は人間ドックやがん検診の必要性は低い。

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