病気は誰しも怖い。健康診断で早めに気づいて治したいものだが、種類や検査方法は様々だ。基準値が厳しく、みんなが病人にされかねない問題もある。がん検診には有効な検査と、なかには医者が勧めないものもある。医者が教える“いい健診”と“悪い健診”の見分け方を紹介しよう。
【図表】注意点やお勧めの検査方法など、主な健康診断のポイントはこちら
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職場や自治体の無料健診で何か異常を指摘され、精密検査を受けた人は多いだろう。人間ドックやがん検診を受ける機会もある。
検査結果を受け取ると、血圧やコレステロール、血糖値などの数値にどうしても「一喜一憂」してしまう。異常がないのはうれしいことだが、健診や人間ドックの結果をうのみにすることは問題だ。有効性に疑問を示す医師も少なくない。
例えば血圧では、「正常範囲」が厳しすぎるという注意点がある。日本高血圧学会は4月から、正常血圧の範囲を厳格化。収縮期120mmHg/拡張期80mmHg未満とし、140/90以上を高血圧としている。日本人の約4千万人が高血圧に該当する。
『健診・人間ドックはもうやめなさい!』などの著書がある医師で山野医療専門学校副校長の中原英臣さんは、血圧測定の必要性は認めながら、こう指摘する。
「世界トップクラスの平均寿命を誇る国で、これほど多くの人が高血圧にされてしまうような基準値は異常です。基準値に年齢差も性差もないこともおかしい。血圧は加齢とともに高くなっていくのが普通です。1960年代までは日本人の年齢別平均血圧の出し方は『最高血圧=年齢+90』とされていました。上の血圧が170とか180もあれば降圧剤を飲まなければならないでしょうが、140を超えたら飲む必要があるのか。厳しすぎる基準値で“病人”を増やし、病院や製薬会社の利益に貢献させられているのです」
コレステロールも同様に基準値が厳しいようだ。中原さんは、「コレステロール値は少し高めのほうがむしろ死亡率は低い」という。
病気の予防や死亡率の低下に、本当に役立つ検査は限られる。厚生労働省の研究班が2005年に発表した報告書は多くの検査項目について、「有効性が薄い」との評価をまとめた。γ‐GTPなど肝機能の数値だけでは、アルコール性肝臓病やウイルス性肝炎が見落とされることもある。心電図の測定やコレステロール値も心筋梗塞(こうそく)の予防に役立つ根拠はなかったという。