記者C「ヘソをとるのは鬼でなくカミナリ様だ、との指摘もありますが」

桃「そのようなご意見はわたくしの耳にも入っております。ただ、ただですね。カミナリ様と鬼の定義もいまだハッキリせず『空から落ちてきたカミナリ様が鬼になるのではないのか?』という議論もされているその最中にですね、事態は刻一刻と変化しつつある。現にヘソをとられた子供がいるなか、我々がとるべき道は自ずと限られてくると思うのが当然ではないですか!? では△△新聞さんにお尋ねしますが、これ以上ヘソのない子供を増やして良いのですか!? 金太郎時代を思い出して頂きたい。相撲ばかりとっていた、木にマサカリを振り下ろすだけの、暗黒の時代に戻ることだけはあってはならない!とわたくしは思うのであります」

記者D「もうひとつ。鬼ケ島遠征の際に乙姫の側近のカメから大量のおむすびが贈られたと伺いました。鬼退治で得た財宝が『第2竜宮城』の建設費用に充てられるのではないですか?」

桃「そんなことはあり得ない話でありまして……」

司会「事前通告のない質問は控えてください!」

 ……あー、おとぎ話くらいは夢見させてよー。

週刊朝日  2019年8月30日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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