

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「記者会見」。
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司会「これより鬼退治から見事帰還された桃太郎凱旋記念記者会見を行います。ではチーム桃太郎を代表し桃太郎氏よりご挨拶を……」
桃太郎「本日はお忙しいところ各社記者の皆様にお集まり頂き誠にありがとうございます。わたくしとしましても、出陣前から厳しい戦いになるとは思っておりましたが、このように皆様のご期待にお応え出来ましたことは嬉しくもあり、また今後も日本の安全を確保するべく、ここに仲間たちと共に手をとって、与えられた使命を遂行すべく、職務に邁進する所存であると、申し上げておきたいと、思うところであります」
記者A「キャプテン、今の心境を一言で表すと?」
桃「今日のような一点の曇りもない蒼天。晴れやかな心持ちであると、まさに思うところであります」
記者B「○○新聞です。キャプテンの任期満了に伴うポスト桃太郎はイヌ、サル、キジのうち誰が有力と思われますか? 関係者筋によると『お爺さんは会派を超えて一寸法師に秋波を送っている』とも言われておりますが……」
桃「その件に関してはですね、今はまだ鬼との戦いに勝ったばかりでありますから、祖父とはゆっくり話も出来ておりませんし、わたくしの口からはなんとも言えないわけでありまして、これからチーム内で議論を尽くしてですね、最良の人選をしていきたいと、そのように思うわけであります」
記者C「△△新聞です。『鬼を征伐するうえではたして十分な大義名分があったのか?』という議論がいまだに尾を引いています。キャプテンは鬼征伐敢行に足る民意が本当にあったとお考えですか?」
桃「おっしゃる通りですね、この度の鬼退治には様々な異論があったのはわたくしも承知を致しております。ただですね、現実には鬼による被害は甚大なるものでありました。荒天の際には複数名の子供が鬼にヘソをとられたという報告を受けております……」