


初めての甲子園は3球三振――。
13日に行われた第101回全国高校野球選手権大会2回戦で、敦賀気比(福井)に敗れた国学院久我山(西東京)唯一の1年生が、ほろ苦いデビューを飾った。
「頭が真っ白になった」
内山凜は七回2死二塁で迎えた今大会初打席をこう振り返る。
ベンチ入りメンバー18人のうち、17人が3年生。守備力を買われ、下級生でただ一人登録された。エースの高下耀介や他の先発メンバーも「守備が安定している」と口をそろえる。
「レギュラー選手がプレーしやすいように徹底してサポートします」
そう言って、甲子園では裏方の仕事をこなしていた。だが、ついにこの日、出番がやってきた。
先発の高下が敦賀気比打線に打ち込まれ、三回途中から右翼の守備に回った。その後、高下は七回途中に再びマウンドに戻る。その右翼の守備に内山がついた。
「落ち着いて守ることができました」
その裏、2番に入っていた内山に打席が回ってきた。
「8番からの攻撃だったので、自分に打席が回ってくるのはランナーが出たチャンスのとき」
冷静に自分の役割を考えた。2死から1番・西川新が二塁打を放ち、予想通り、好機で打席が回ってきた。
「打席の記憶はほとんどありません。応援も何も聞こえませんでした。守備の時とは全く甲子園の雰囲気が違いました。余裕がまったくありませんでした」
打席に立つまでのの冷静な思考は、どこかに消えていた。
1球目、内角の直球を見逃してストライク。2球目は、スライダーをファウルした。そして3球目の直球にバットは空を切った。初打席はあっけなく終わった。
「何も考えることができないまま、3球三振で終わってしまった」
下級生として、自分だけが経験した大舞台。宿舎では「選手としても人としても尊敬する」という背番号7の坂口純哉と同部屋だった。
「スイングが遅いから、速いストレートを打ち返すことができない。坂口さんのように、黙々と努力できる選手になりたい。すぐに練習に取り組みたいと思います」
先輩の背中を追いかけた夏が終わった。だが、春夏6度目の挑戦で甲子園初勝利は果たした。今度は自分が新しい歴史を作る番だ。(本誌・田中将介)
※週刊朝日オンライン限定記事