「一部の猿の仲間にはわずかに汗をかくものもいますが、ほとんどの動物はおおむね汗をかきません」(松本教授)

 また、これまでは2歳ぐらいまでに汗腺の発達が決まるというのが通説だったが、成長しても環境によってたくさん汗をかけるようになるとわかってきた。例えば、青年海外協力隊でアジアやアフリカなど暑い地域に派遣されると現地の生活になじんで上手に汗をかけるようになったり、インドネシアから日本へ留学した人が日本人のような発汗スタイルに近づいたりもするのだという。松本教授は「汗をかく環境にいると汗をかきやすくなります」と話している。

 汗をかきやすくなることを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」という。暑熱順化には短期と長期があり、日本人が夏にたくさん汗をかきやすくなるのは短期暑熱順化になる。例えば、6月ぐらいに暑くなり始め、体が順化し始めるが、まだ慣れていないので、簡単に体温も上がってしまう。熱中症になる人は6月ぐらいに急に暑くなった時に多く、しかも、低い温度で症状が出る。

 それが7月後半ぐらいになると、体が夏向きに順化して同じ気温でも対応できるようになっている。暑熱順化が進めば「3度くらい高い温度に耐えられるようになります」と話している。

 発汗はもともと人間に備わった体温調節機能。エアコンで冷やして汗をかかないようにするのではなく、いい汗をかけるように、普段から体を慣らしておくことが大切なのだ。

(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日オンライン限定記事

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