ドイツでは性暴力や性的同意について子どもの頃に学校で教わるという。性暴力被害者の多くは「自分に何が起きたのかわからない」という思いをする。被害者の沈黙で加害者は守られてきた。幼い頃から「同意がない行為は暴力」という教育を行うことで、性暴力を可視化し、告発しやすい社会をつくるのだ。いいですね、日本ではピルについて教えるのも騒動が起きます、と言うと、もちろん「なぜ」と聞かれた。
約2時間の尋問。私は首を垂れ、うなだれた囚人のごとくこう答えた。これが多分、本件の真実です。
この国には、女に人権がないんです。男にも少ししか人権がないんです。だから、きっとこんな状況なんです。
しかし鬼検事は尋問の手を緩めずに最後の「なぜ」を放つ。「なぜ、人権がない?」
それにはこう答えた。
「だから声をあげてるんです。8月11日のフラワーデモには沖縄と京都も加わった。全国で女性たちが性暴力と闘おうとしてる。こんなふうに、私たちの声が変えていくしかないんです」
さすがに「なぜ」はもうなかった。
※週刊朝日 2019年8月16日‐23日合併号