北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏はドイツのメディアから日本の性差別について取材を受けたという。

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「『なぜ日本では#MeTooが盛り上がらないのだろう』と取材を始めたら、『わりと盛り上がっているではないか』と途中で取材方向が変わったので、話を聞きたい」

 そう言って先日、ドイツ週刊誌「シュピーゲル」の取材を受けた。ヨーロッパ最大の発行部数を誇る週刊誌が、なぜ日本の#MeTooを?と不思議だったが、取材に来たライターによれば、「日本人は優しく、サービスは素晴らしく、街は清潔で、治安も良い。それなのに性差別はすさまじい。娘への強姦を続けた父親への無罪判決など、女性の人権が軽視されているのでは」とのことで、つまり日本の性差別はニュースとして価値があり、そこでの#MeTooもまたニュースなのだということだった。

 彼女は私に「なぜ」「なぜ」「なぜ」を連発した。

「なぜ、日本では児童ポルノ(アニメのポルノのことだった)が流通しているのですか?」
「二次元での表現は合法です。表現の自由です」
「なぜですか?」
「わかりません」
「日本では、性教育がほとんどないと聞きました。なぜですか?」
「わかりません」

 もちろんドイツにだって性差別は根深くある。それでも例えば大臣が「セクハラ罪という罪はない」と発言した後も大臣で居続けられるなど、フツーに考えられないことなのだという。

 うらやましい。そもそも日本ではセクハラが人権問題として捉えられず、軽く扱われているのかも。そう言うと、「#MeToo=人権だけど? なぜ?」と驚かれた。

 次第に、「セクハラという罪」を抱えた国の民として尋問をされているような気分になってきた。彼女は検事のような顔で聞く。

「なぜ、日本の女性は怒らないんですか?」
「怒ってます」
「なぜ、それが大きな流れにならないんですか」
「わかりません」

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