流涙症は涙が止まらなくなる症状のこと。主な原因は、「鼻涙管狭窄・閉塞」だ。涙腺から分泌された涙は眼の表面を潤し、目頭付近にある孔(涙点)に吸い込まれ、「鼻涙管」という細い管を通って鼻の中へ排出される。加齢によって鼻涙管が細くなったり詰まったりすると、スムーズに涙が排出されずにたまり、涙目になる。また、白目を覆っている結膜がたるむ「結膜弛緩症」でも、垂れ下がった結膜のひだの間に涙がたまりやすくなる。
流涙症は失明したり命にかかわるようなものではないが、しょっちゅう涙を拭かなければならず、お化粧もとれてしまうなど、とにかく煩わしい。また涙がよどんで雑菌が繁殖しやすくなり、炎症を起こす人も多い。矢島医師は言う。
「年だから仕方ないとあきらめていたり、どうせ治らないと思い込んで我慢している人もいますが、QOL(生活の質)を大きく低下させてしまいます。どちらの場合も、手術で治すことができます」
鼻涙管狭窄・閉塞は狭くなった部分にシリコンのチューブや内視鏡を入れて開通させる。それでも開通できないときは目頭と鼻の間を切開して直接開通させる方法もある。結膜弛緩症は、結膜のたるんだ部分を切除したり、熱をかけて焼き付ける。持病があって全身状態が悪いという人以外は、局所麻酔による日帰り手術で済む。
藤田愛子さん(仮名・68歳)は5年ほど前から流涙症に悩まされ、人と会うときも食事をするときもハンカチが手放せない生活を送ってきたが、鼻涙管狭窄の手術を受けた後は、すっかり症状がおさまった。
「以前は外出先でも頻繁に涙をぬぐわなければならなかったので、周囲の目が気になって引きこもりがちでした。鼻涙管狭窄の手術は、白内障のようにたくさん情報があるわけではないので不安でしたが、こんなに楽になるなら早く手術をすればよかったと思っています」
と藤田さん。今は目の周りのお化粧も楽しめるようになり、生き生きと過ごしているという。
矢島医師に、眼を守る方法を教えてもらった。
「眼がかすむとか痛いとかごろごろするとか、見えづらいとか、普段と違うことが起きたら、放置せずに受診しましょう。40歳を過ぎたら、症状がなくても年に一度は眼科で眼の状態をチェックしておけば安心です。また、かかりつけの眼科を決めて継続して診てもらうようにすれば、視力の低下などの変化がわかりやすくなります。生活習慣病がある人は内科の医師と相談しながら、病気をコントロールすることも大切です」
(ライター・熊谷わこ)
※週刊朝日 2019年8月16日‐23日合併号