上京するまで舞台を見たことがなかったと話す女優・のんさん。初めて足を運んだ赤坂の劇場では、ブロードウェーからキャストが集結し、ミュージカル「コーラスライン」が上演されていた。チケットの半券の扱いにも戸惑い、「なくしたら大変なことになるのかも」と、舞台の間中ずっとヒヤヒヤしていた。
【写真】全身金タイツ、金のミニスカ、赤のマントで絶唱するのん
「舞台は未知の世界です。台詞も音楽も美術も何もかもが作りこまれていて、毎日同じ台詞、同じストーリーを繰り返す。でも、その日に観られるものはその日にしかない。目の前で、一度しかない演技を見られるって特別ですよね」
舞台に出たいと思うようになったのは、朝ドラへの出演がきっかけだった。脚本の宮藤官九郎さん自身が劇団の所属だったこともあり、多くの“舞台人”との出会いに恵まれた。中でも、渡辺えりさんとは意気投合し、「今度、私が舞台をやったら出てよ!」と豪快なノリで誘われたこともあった。
「えりさんは、対等の目線で話してくださる方。『あまちゃん』の現場でも、若手もベテランもスタッフも関係なく、率直に自分の思いをぶつけていて、限りのない素直さを持っている方だと思いました」
そんな、大尊敬するえりさんから、正式に、舞台出演の依頼があった。三島由紀夫賞を受賞した上田岳弘さんの小説「私の恋人」をえりさんが脚色・演出。30もの役柄をのんさん、えりさんに小日向文世さんを加えた3人が演じ分ける音楽劇だ。