海外から帰ってきた、日の丸国旗をかけられた棺を見ても、あなた方はなにも思わないのかと。
いいや、彼らはそれをも利用するだろう。亡くなった人々を英雄扱いし、異を唱えると非国民扱いする。政治がしっかりしていれば、メディアが勇気を持って政権批判をしていれば、亡くならずに済んだ命もあった、という反省にはならない。
そして、国民は並べられた棺の映像にはじめは驚き、でもそのうち慣れてくる。芸能人のスキャンダルと同等のニュースとして捉えるようになる。選挙があれば、どれだけ不祥事が重なっても、巨大与党へ投票する。
かつて、田中角栄氏は、憲法9条を盾に、泥沼化するベトナム戦争への派兵要請を断った。それはつまり自分が盾になり、米国と戦う覚悟だったということだ。
そんな大人は少なくなった。この国は、見た目は大人の、グロテスクな子どもばかり。ちゃんと大人になろうじゃないか。
※週刊朝日 2019年8月2日号