──他社さまにもないと思います。お客さまの電話機に留守電機能は?

 ──ついてます。

 ──じゃ、午前中だけ留守電設定されたらいかがでしょうか。

 ──着信音が鳴るやないですか。あれで眼が覚めてしまいますねん。

 ──着信音量を最小にしておけばいいのでは?

 ──そんな機能があるんですか。うちの電話に。

 ──あると思いますが。

 ──しかし、毎日、午前と午後で留守電と音量を設定するのはね……。それに、昼からの電話は仕事がらみやし、とりたいんですわ。

 ──いろいろ条件がおありなんですね。

 ──迷惑電話おことわりサービスとかあるんですよね。話をして営業電話と分かったら、その番号を登録して二度とかかってこんようにするサービス。

 ──ございます。

 ──無料ですよね。

 ──いえ、月に六百円です。

 ──六百円……。大金やな。それで片っ端からお断りできるんですか。

 ──いえ、最大で六件です。

 ──たった六件で、月に六百円……。

 ──申込みされますか。

 ──もうけっこうです。

 電話を切った。話をした女性は隣のオペレーターにいうだろう。あほみたいな迷惑電話がかかってきたと。「マキ、あかんわ」そばで遊んでいるマキにいい、わたしは電話機のマニュアルブックを見て、二十四時間、着信音なしの留守電にした。

週刊朝日  2019年7月26日号

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