「いつもと違う」
と話した。大場さんは、「同じでございます」と答えた。だが、明仁天皇は、しばらく考え、
「やはり、違う」
穏やかだが粘り強い指摘を続けた。
一方、令和の天皇陛下の髪質は「猫毛のように柔らかいのです」(大場さん)。
大場さんは、10年間、徳仁新天皇のそばで仕えたが、怒った姿を見たことがないという。
「ときには、ご家庭への思いと、皇太子としてのお立場との板挟みになり、孤独で苦しい思いを抱えていたこともあったでしょう。しかし、将来の天皇として、帝王学を授けられて育った方です。常に感情を律して、穏やかで優しくあれ、と生きてこられたのでしょう」
そして、人びとの日常の生活や文化にも深い関心を示しているという。
東宮御所の改修中、大場さんのサロンで調髪を受けていた時期がある。クリスマスをひかえた寒い日、先の古中さんは、御所で飲む機会のないものを、と思い抹茶オレを出した。あっという間に飲み終えた徳仁皇太子は、
「これは何という飲み物ですか、おいしいですね」
と尋ねた。
「抹茶オレです」(古中さん)
常に好奇心を持ち、「やってみましょう」とチャレンジする柔軟さと情熱を秘めた徳仁新天皇。しなやかな強さが、令和流の強みなのかもしれない。(本誌・永井貴子)
※週刊朝日 2019年7月19日号