皇太子さまは、ほほ笑みながら答えた。

「なるほど、これもいいですね」

 しかし、翌月には、

「この前の髪形ではなく、やっぱり、前の通りでいいです」

 雅子さま愛子さまに不評だったのか、と心配になった。それでも、次の調髪の際にもう一度、「ふんわりスタイル」について話してみると、徳仁皇太子は、こんな約束をしてくれた。

「今日、同級生の集まりがあるから、みんなに意見を聞いてみましょう」

 どうやら、イメチェンは女性の同級生たちに好評で「センターに近い分け目もいいね」と褒められたご様子。最終的に、徳仁皇太子の髪形は、長年の定番だった8:2分けから、6:4分けに落ち着いた。

 実際、07年ごろまでの徳仁皇太子と、10年以降の写真を見比べるとイメチェンの効果がよくわかる。ここ数年、夏のご静養では、雅子さまや愛子さまとのマリンカラーなどでのおそろいのコーディネートを見せる場面もある。カジュアルな装いもよく似合う髪形に変わっている。

 ボリューム感が出にくいため、オイルの整髪料をやめて、ふわっとさせるように大場さんが提案した際も、「いいですよ」と任せてくれたという。

 長年、人の頭皮と髪に触れてきた大場さんは、髪形や髪質から、不思議とその人物の生き方や性格が伝わってくると感じている。

■1ミリの違いも見抜いた明仁天皇

 平成の明仁天皇の髪は、まっすぐで太い、剛直な髪質だ。昭和天皇の髪についても、父の栄一さんは、「まっすぐな髪をお持ちだった」と話していたという。

 ふたりの天皇は、連合国軍総司令部(GHQ)の占領下で、天皇制廃止の危機すら体験している。それだけに、強い意志を秘めた人柄が表れているかのようだ。

 そして厳格で威厳に満ちた明仁天皇。調髪の際に、鏡越しの視線を受けると、すべてが見透かされるような畏怖すら感じていた、と大場さんが振り返る。

 あるとき、分け目が1ミリずれてしまったことがあった。じっと、鏡を見つめていた明仁天皇が、

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