西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「老化のプラスを楽しむ」。
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【ポイント】
(1)老化はマイナス、しかしプラス面もある
(2)老化とともに人生の味わいが深まる
(3)故郷・地球への思いも深まってくる
年をとることによる老化現象については以前にも説明しました(3月22日号)。
大まかに一口で言えば、「老化によって体に起こるさまざまな変化。基礎代謝・循環・呼吸・腎・神経・免疫などの機能が低下し、疾患にかかりやすくなる」(広辞苑)ことだといえます。「機能が低下し、疾患にかかりやすくなる」のですから、いいことだとは言えないですよね。しかし、マイナスがあればプラスもあるというのが物事の常です。そのプラスに目を向けて楽しむのがナイス・エイジングの方法です。
私は老化とともに人生の味わいが深まってきているのを日々、感じています。
例えば、毎日の晩酌です。また酒の話かと言われそうですが、私にとっては生命をときめかせる重要な時間なのです。この晩酌も40、50代は勢いにまかせて飲んでいるだけでした。味わいを感じられるようになったのは60代になってからです。太極拳の師である楊名時先生と盃を酌み交わしたのもその頃です。先生はすでに70代で、年は一回り違いました。たわいのない話しかしないのですが、生命の深まりを感じる貴重な時間でした。老境の揺籃期(ようらんき)に、よき師に恵まれたことを心から感謝しています。
また40年続けている呼吸法も、よくなったのは80歳を過ぎてからです。本当に呼吸法が好きになりました。私自身が考案した「時空」という呼吸法を皆さんと一緒にすることが多いのですが、それが楽しくてしかたがないのです。先日、長年「時空」に付き合っていただいている方に「今日の時空は殊更よかった」と言ってもらい、うれしくなりました。亀の甲より年の功ということでしょうか。