私が、民主化を求める市民運動に招かれて韓国訪問中に、虐殺現場で市民から何度も光州事件の説明を受け、市民側の証言で驚くべき2000人以上と言われる累々たる死者の墓を見てきたので、この光州事件を描いた大ヒット映画『タクシー運転手──約束は海を越えて』を昨年、日本の映画館で見た時、目から涙があふれて止まらなかった。

 映画は、全斗煥(チョン・ドゥファン)の軍政に反対して民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こった時、市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷く中、ソウルのタクシー運転手キム・サボクが、ドイツ人記者ピーターことユルゲン・ヒンツペーターを乗せて光州に運んだ実録を基に、ドラマに脚色した作品である。

「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者の約束を信じて、タクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届け、たまたま光州虐殺事件に遭遇したタクシー運転手マンソプは、それまでは学生の反政府デモを批判していた。ところが、無防備の市民が軍人に虐殺されているすさまじい真実を知ってから、自ら私服警察に命を狙われても命懸けで市民を助けようと動きだし、病院内部の負傷者と死者について真実を全世界に伝えるようピーターに頼んだ。最後には、光州のタクシー運転手たちが総力をあげ、次々と殺されながら、この市民虐殺の実写記録を持つドイツ人記者ピーターの乗ったタクシーを光州からソウルに脱出させるまでが描かれた。

 かくしてドイツ人記者が当時のすさまじい実写映像を全世界に放映し、それが韓国に逆輸入され、全斗煥たち独裁軍人の悪事を初めて知った韓国民が衝撃を受けた史実である。タクシー運転手マンソプを、カンヌ映画祭パルムドール俳優ソン・ガンホが迫真の演技で演じ、実在のドイツ人記者ピーターを『戦場のピアニスト』でドイツ人将校に扮したトーマス・クレッチマンが演じた。

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すべての日本人にこの映画を見てほしい