日本の芸能界を長年リードしてきたジャニー喜多川さんが、7月9日午後、都内の病院でなくなった。87歳だった。そのキャラクターについて、トーク番組や歌番組、時にはステージ上で、「ユー、〇〇しちゃいなよ」といった愛あるモノマネ交じりに語られることも多い。ジャニーズのメンバーたちには、敬語を使われるのを嫌うというエピソードもある。
芸には厳しいことで知られるが、誰に対しても尊大な態度はみせず、タレントともフラットにつき合う。そんな姿勢があったという。フォーリーブスや郷ひろみが活躍していた40年以上前、週刊誌記者としてジャニーさんと密接に関わった時期があり、著書『異能の男 ジャニー喜多川』(徳間書店)などがある作家の小菅宏さんは、ジャニーさんは事務所に所属するタレントを「仲間」だと語っていたと明かす。
「ジャニーさんは、あまり『タレント』という言葉は使いませんでした。タレント、つまり『才能』は、もともと彼ら少年たちがみんな自分の中に持っているもの。それを引き出して輝かせるのが僕の役目。だから彼らはタレントではなく、『スター』『エンターテイナー』なんだと。彼は、外見だけでなく、少年たちがそれぞれ持っている内面に、どこか自分と共通するものを見つけ出そうとしていました。だから、『仲間』になれるんです」
そのジャニーさんに若手の指導面での「後継者」として指名され、新会社の社長に就任したのは滝沢秀明だ。芸能界引退直前の昨年12月の本誌インタビューでこう語っている。
「後輩のためというよりは、その子たちを事務所に迎えたジャニーさんの気持ちに応えたくてやっています」
舞台に立つエンターテイナーとして、ジャニーさんが才能を認めていたのは誰か。
「あおい輝彦、郷ひろみ、堂本光一……エンターテイナーとしての素質、才能を認めているとジャニーさんの口ぶりから感じたのは、もちろん他にもたくさんいます」(小菅さん)
持ち合わせていた才能は異なるものの、光一と滝沢に共通するのは、のちに自身で演出を手がけるようになったこと。ジャニーさんがそれをすすめたという。映画演劇評論家の萩尾瞳さんは、次のように分析する。
「少年隊の錦織一清さんもそうですね。ジャニーさんご本人が作りたいものとはまた違う世界を彼らに任せ、次の世代にそれぞれの世界を作り出していけるよう育てていたんだなと感じます」
NEWSやKAT-TUN、Hey! Say! JUMP、Sexy Zoneらが歌い継いできた曲「SUMMARY」に、こんな歌詞がある。
<繋がってくHistory
受け継がれた情熱>
ジャニーさんが紡ぎ出し続けたヒストリー、そしてずっと持ち続けた情熱は、この先もずっと、すべてのジャニーズの「仲間」たちに受け継がれていく。
(本誌・太田サトル)
※週刊朝日オンライン限定記事