作曲は13曲すべて布袋自身(うち4曲は共作)。
「この曲はAIをテーマにしよう」「クローンが主人公のストーリーを描こう」
作詞家とのディスカッションを密に重ねていった。
『GUITARHYTHM V』からは10年。その間に、布袋をとりまく環境も大きく変わった。12年にそれまで所属していた事務所を離れ、東京の自宅も手放し、音楽の拠点も生活の拠点もロンドンへ移した。
「もう一度夢を追いかける」
という強い思いで決めた。家族をともなっての50歳での渡英だった。
ビートルズ、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイなど、ロックの歴史を築いてきたアーティストたちを生んだイギリスで勝負したかったのだ。
「ロンドンは東京と比べると時間がゆったりと流れているので、音楽にじっくりと向き合うことができます。今作は、イギリス人、イタリア人、日本人などの多国籍チームでつくりましたが、日本の制作現場とは違い、急がずじっくり時間をかけて行われる。レコーディングした曲を少し時間をおいて俯瞰してから、客観性をもって再チェックしたり。そのプロセスを踏むことで、どの曲も、サウンドも歌詞も奥行きが生まれました」
渡英して6年を経て、ロンドンの時間の流れ、ロンドンの音楽づくりに、布袋もなじんできた。
「ロンドンの冬は長く暗い。朝は9時になってもまだ暗く、午後4時には陽が沈みます。最初は憂鬱でしたけれど、やがて、冬が暗いからこそ春が待ち遠しい。暖かい季節を喜びで迎えられるようになるんです」
その思いにいたったのは、家族の理解を得られたことが大きかった。
「僕の都合での渡英だったので、家族には最初かなりとまどいがあったはずです。気候、言語、人間関係……。苦労は多かったはずです。でも、今は(今井)美樹さんも明るい表情でいきいきと暮らしています。ロンドンの環境を楽しんでいます。ロンドンは大都市でありながら、緑が多く、川が流れ、自然環境が豊かです。うちの小さな庭にも色鮮やかな花が咲き、鳥がさえずります。そういう日常を楽しむ家族の姿は、僕の音楽生活を豊かにしてくれます」