物語性のあるロックアルバム『GUITARHYTHM VI』をリリースした布袋寅泰が語る、ロンドンでの音楽生活、家族への感謝の気持ち、BOOWYのメンバーとの再会。布袋の世界基準の音楽制作、ロックスピリッツとは──。
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2018年、布袋寅泰はプレッシャーを感じていた。
「17年にリリースした『Paradox』はとても満足できるアルバムでした。それはもちろん喜ばしいことですが、アーティストとして前作を超える作品をつくらなくてはいけません」
そのときに頭をよぎったのが「GUITARHYTHM」シリーズだった。1988年にBOOWYが解散し、ソロになった布袋が最初にレコーディングしたアルバムが『GUITARHYTHM』。それまでのバンドサウンドと異なり、物語性のある、映像が感じられるようなロックを意識した。リスナーからも強く支持されてシリーズ化。09年までに5作がつくられた。
「バンドが解散し孤独になったものの、解き放たれたような気持ちで挑んだ大胆な冒険心を思い起こし、ソロ30年を経た今の『GUITARHYTHM』をつくろうと考えたんです」
そして『GUITARHYTHM VI』をレコーディング。5月29日にリリースされた。
今作では、未来の地球が描かれている。
「あの日見た未来」
これが制作の過程で布袋の中に浮かんだテーマだ。
「『GUITARHYTHM VI』はSFの短編集をイメージしてつくり上げました」
全13曲。1曲目とラストはインストゥルメンタル。それぞれ映画のオープニングとエンドロールを思わせる。ほかの11曲の“音楽物語”で、布袋はギターだけでなく歌も歌っている。
「82年に公開されたリドリー・スコット監督の名作『ブレードランナー』が僕は大好きでね。あの映画の舞台は2019年の地球。奇しくもいま、僕たちはその時代を生きています。映画のようにクルマは空を飛んでいないけれど、デジタルは進歩しました。大きく変わった世界を音楽で表現しています」