

酒と薬を一緒に飲んではいけない。そんなことは誰もが知っている。だが、ほかにも薬と一緒に摂取すると危険な組み合わせがある。
「組み合わせによっては、薬が効きすぎて、命にかかわる副作用を引き起こしかねません」
こう話すのは、元東京薬科大学教授で(一社)日本くすり教育研究所代表理事の加藤哲太氏。薬と食べ物・飲み物の関係について、加藤氏に詳しく聞いた。
「口から投与した薬は、胃で溶け、腸で吸収されて肝臓で分解されます。この過程で代謝されていき、分解されずに残った成分が薬として効果を発揮する仕組みになっています。しかし、もし肝臓で分解されないと、成分が残りすぎて薬が効きすぎてしまう」
体重の少ない子どもは当然だが、高齢者は、肝臓や腎臓の機能が低下してくるため、若年者と同じように飲んでいても、薬が効きすぎて副作用の危険性が高まるという。
そこへさらに、薬と悪い食べ合わせや飲み合わせが重なると、重篤な副作用を引き起こしかねない。加藤氏は、薬の効果を左右するとして、次のポイントをあげる。
1.食事に含まれる成分と薬の成分同士がくっついて、薬が血中に取り込まれず、効果が発揮されない(例:ミネラルウォーター+抗生物質)
2.成分同士で効果を打ち消し合って効かない(例:カフェイン飲料+睡眠薬)
3.同じような働きをする成分同士は、効果が重なり効き目が強まる(例:タマネギ+抗血栓薬)
4.食べ物の成分が薬の吸収をよくして効きすぎる(例:牛乳+睡眠薬)
5.食物繊維が薬の成分を絡めとってそのまま外へ排出してしまう(例:ごぼう・サツマイモ+薬)
6.酵素を増やす食品を食べると薬が代謝されて効きにくくなる(例:ニンニク+抗HIV薬)
例えば、グレープフルーツジュースは、肝臓の代謝酵素を減らすことから、さまざまな薬と相性が悪い。
「高血圧薬であるフェロジピンの場合、水で飲むと、薬の約15%が血中に移り、ほどよく効果を得られます。ですが、グレープフルーツジュースで飲むと、薬の代謝が妨げられて倍の30%程度が血中に移るという研究結果があります。薬の血中濃度が上がり、急激な血圧低下でめまいや頭痛を起こしやすくなる恐れがあるのです」