



チケット争奪戦で早くも機運が盛り上がる2020年東京五輪。日本オリンピック委員会は金メダル30個を目標に掲げるが、主力選手の相次ぐ故障などで暗雲が立ち込める。それでも、過去最多の1964年東京、04年アテネ両五輪の16個は上回りそうだ。
目標達成にはスタートダッシュが肝心。開会式翌日から行われる競泳に期待したいが、エース格の選手たちを中心に苦しんでいる。
16年リオデジャネイロ五輪男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介は不調に悩まされ、世界選手権代表選考を兼ねた4月の日本選手権を欠場。昨夏のアジア大会6冠の池江璃花子は白血病を公表し、本番に間に合うか不透明だ。日本選手権で日本水泳連盟の派遣標準記録を突破し、代表入りした選手は、前年の21人の半分以下の10人だった。
その中で最注目は女子個人メドレーの大橋悠依だろう。18年のパンパシフィック水泳選手権で200メートル、400メートルの2冠を達成した。
00年シドニー五輪代表の萩原智子さんが、まだ代表決定前との前提で解説する。
「個人メドレーでここまで安定感のある選手はなかなかいません」
萩原さんは自身の経験から、「個人メドレーは調子の波が出やすい」と話す。
「バタフライはいいのに平泳ぎはダメといった、各泳ぎの調子の良し悪しは当日に出てきます。大橋選手は良し悪しを把握して、まとめる能力が高いです」
男子の注目は200メートル平泳ぎ世界記録保持者の渡辺一平だ。
「193センチという身長は世界に引けを取りません。しかも水の抵抗を受けない泳ぎができる。(04年アテネ、08年北京両五輪2冠の)北島(康介)さんの姿勢がお手本になっています」
小柄なハンディを補うために技術を磨き続け、世界と戦ってきた北島の姿勢が受け継がれているという。
「苦手としていたコーナーワークもターン動作が0・1~0・2秒ほど縮まるなど成長が見られます。世界トップ級との戦いではその差はとても大きい。まだまだ伸びしろを感じさせます」