ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
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博多行きののぞみ (※写真はイメージです) (c)朝日新聞社
博多行きののぞみ (※写真はイメージです) (c)朝日新聞社

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「のぞみ」などを取り上げる。

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 平成とは、昭和に誕生し熟成した様々なコンテンツやメソッドが『完成形』を迎えた時代とも言えます。例えば新幹線の『のぞみ号』。1964年(昭和39年)に登場した夢の高速鉄道は『こだま』『ひかり』を経て、92年(平成4年)の『のぞみ』でひとつの完成形を見ました。それにしても、この『のぞみ』というネーミング。今となってはとても平成っぽい。やがて疲弊していく日本社会をすでに暗示していたかのような名称ですが、昭和の時代だったら「ひかりより速そうな名称を」で『のぞみ』には着地しなかったでしょう。

 ちなみに当時私の父が勤務していた某百貨店の宣伝部にも「いくつか案を」とのお達しがあり、その時父が考えたのは『うわさ』だったそうです。確かに『ひかり』よりも速く駆け巡るイメージ。そして「乗り遅れたくない!」と思わせるトレンド感があります。さらには現在のSNS時代すらも見据えた『人や街の性(さが)』に満ちた非常に色気のあるネーミングです。乗ってみたかった『うわさ323号新大阪行き』。言ってみたかった「最終のうわさって何分発?」。聞いてみたかった『This is UWASA Super Express bound for Tokyo』。

 来る2027年にはリニア新幹線が開通し、最終的には東京─大阪が陸地経路で1時間ちょっとになるとか。そこまで速くして人間の距離感覚が保てるのか心配です。ほとんどトンネルだと聞きますし、それじゃ旅の情緒もないなと思いつつも、開通したらバンバン乗るつもりなので、次こそ『うわさ』の採用を是非!

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