1時間くらいの長い電話が終わると、陛下は顔を紅潮させておられ、表情からうまく話がいったのだと想定致しました。陛下は最後のひと押しをされたのでしょう。

 正式に婚約発表されたのは11月27日。半年後の59年4月10日にご結婚。陛下は子供の頃、両親とは別のところに住み、週末だけお会いになれた。美智子さまは将来を見据え、浩宮さまや秋篠宮さまが父親から帝王学を学ぶのが一番いいと考えられ、家族が一緒に住むようにされたわけです。ご自分で育てた。それまでの皇室の歴史を変えられたのではないかと思います。

 家族のだんらんにはテニスや音楽の演奏が役に立ったと思いますよ。

 東宮御所にはテニスコートが2面あり、皇太子や秋篠宮さま、紀子さまもテニスをなさいます。雅子さまはテニスをなさいませんが、コートサイドで皇太子のテニスをご覧になって、我々と話をなさっていらっしゃいます。

 コートサイドでは「サーヤ」こと、黒田清子さんが紀子さまたちを連れて一緒にいちご摘みに出かけたり、家族仲陸まじい光景をお見かけします。

 最近では、私が陛下とテニスのお相手をしたのは2017年5月。その時、隣のコートでは美智子さまは女性の方々とテニスをなさってらっしゃいました。2人ともお元気です。いつぞやは、陛下は「テニスをしていて良かった。人生に自信がついた」とおっしゃっていました。テニスをしていたから美智子さまとも運命の出会いをなされた。テニスで友達ができるし、会話ができる。人生経験としては大変大きなメリットがあったのではないかと拝察しております。

 ご退位なさったら、両陛下は東京都港区の高輪皇族邸に仮住まいをなさるとうかがっております。陛下は誠実で、とても周囲にお気を使われる方。仮住まいで卓球台の部屋を造ったらどうかという話が出たら、「そんなことにお金を使ってはいけないから」とご遠慮されたとのお話を聞いたことがあります。陛下は、卓球はものすごくお上手ですよ。ご退任のお祝いに、卓球台を贈ってはどうか、などと、友人たちと話しております。
(聞き手 本誌・上田耕二)

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