だが、敗戦によって主権は国民が持つことになり、天皇は象徴ということになった。
そして1960年代までは天皇という存在を持続すべきかどうかという論議が、マスコミでも行われていたのである。
となると元号は必要なくなるのではないか。天皇という存在と民主主義とは矛盾する要素が少なくない。
たとえば、天皇、皇太子には基本的人権というものがない。早い話が、天皇や皇太子は嫌だと言っても辞められないのである。住宅を移すこともできないし、皇居の外では自由な行動もできない。
明治以来、主権は天皇にあったが、新しい憲法では主権は国民に移った。昭和天皇は吉田首相に「天皇は主権を持つ国民とどのように付き合えばよいのか」と問い、「世襲である天皇のあり方は憲法と矛盾するのではないか」とも問われたそうだ。吉田首相は答えることができなかった。
天皇と民主主義がどのように協調できるのか。昭和天皇も現天皇も、そのために懸命に努力をされてきたのだと思う。もちろん私たち国民のほとんども、天皇の努力を大変だなと感じながら受け入れているのだが。
※週刊朝日 2019年4月19日号