「芸能界というか、音楽界というか、この世界で私はずっと守ってもらってきました。それはふつうじゃないですよね。自分ではふつうでありたいと心のどこかで思ってきたつもりなのに、ELTの持田香織であることをいつの間にか過剰に意識していた気がします。周囲に甘えてもいた。でも、ありのまま等身大の自分でいることしました。私、なんでも正直に話してしまうから、後悔したり、反省したりも多いんです。テレビ番組でELT以前のアイドル活動の話をしたせいで、かつての水着の写真がばーんと出てしまって、そりゃあ、ああ、言わなきゃよかったな、と思います。悔やみます。でも、気にしないことにしました。すると、とても楽になった。特に結婚してからは、夫のアドバイスもあり、社会ときちんと接する暮らしをしています。電車に乗り、バスに乗り、スーパーに買い物に行く自分を楽しんでいます。打ち明けると、私、電車のプリペイドカードのチャージもできなくて、夫に教わったんです。このままだと、子どもができても何も教えられない親になると思いました」

 そういう今の持田の日常が『てんとてん』にパッケージされている。歌詞の内容は、持田本人が言うように、どこにでもありそうな内容。しかし、とても活き活きと歌われている。心と体のコンディションのよさも、声から伝わってくる。

「夫がスポーツトレーナーなので、彼のアドバイスでエクササイズをしています。以前は泳いでいたんですけれど、最近はランニングに切り替えました。自然と触れ合いながら週に2回か3回走り込んでいます。途中で坂道ダッシュも入れて。体幹が強くなり、大腿筋や大臀筋が鍛えられてきました。ELTのツアーでは、週末に2日間連続でスケジュールが入ってくる。土曜日の終演後に深夜移動して、日曜日に次の街で歌います。体力があった20代のころの曲もやります。フィジカルが充実していなくてはできません」

 現在行っているソロツアーでも楽しそうに歌い、ステップを踏んでいる。

「ソロのツアーも好きな曲を自由に選んで歌っています。アルバム『てんとてん』をはじめソロアルバムの曲を中心に、ふだん私が口ずさんでいる曲もカバーしています」

日吉ミミの「世迷い言」をはじめ、KIRINJIやあみんの曲も歌う。うしろゆびさされ組の「うしろゆびさされ組」では大胆な振りも披露。

「1970年代の『ムー一族』というドラマの劇中歌『世迷い言』は、私の大好きな曲。スナックへ行っては歌っていました。『うしろゆびさされ組』は、おニャン子クラブでは高井麻巳子さんのファンだったので、ステージで一度やってみたかった曲です」

 ソロツアーではELTとは別の、素の持田を思い切り解放している。

「これからは今まで以上に音楽を楽しんで、そんな自分自身や、暮らしの中のわくわくも音にしていきたいです」

(神舘和典)
※週刊朝日オンライン限定

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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