著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は日本サッカー協会相談役の川淵三郎さん行きつけの「利久庵」の「納豆そば」だ。
* * *
あれは1988年のこと。古河電工から、子会社の取締役に出向を命ぜられました。そして会社員の傍ら、日本サッカー協会の理事に。プロリーグ設立に向けて取り組むことになりました。ちょうどその頃、日本橋にうまいそば屋があると紹介されたのがこちら。気に入って、週に2、3度は通っていましたね。当時は近くの兜町の証券マンが昼時になると大勢詰めかけて。地下に下りる階段は背広姿の行列ができていました。
僕が好んで注文していたのが納豆そば。納豆以外に海苔や鰹節、卵がバランスよく入っていて栄養満点。いつも大盛りで注文していました。僕は黒っぽくて太めのそばは好みじゃない。この店は白っぽい更科そばで、細くて繊細。いくらでもするっと食べられます。
最近は夜、家族と時々出かけることも。焼き鳥や、九条ネギが入った出し巻き玉子など、一品料理もうまいですよ。ここに行くとJリーグ誕生に向けて、日々邁進していた30年前のことが懐かしく思い出されます。
(取材・文/今中るみこ)
「利久庵」東京都中央区日本橋室町1-12-16/営業時間:11:00~14:45L.O.、17:00~20:30L.O.、土曜11:00~16:00L.O.※2・3階の昼定食は 11:00~14:00L.O.(土は~14:30L.O.)/定休日:日曜、祝日
※週刊朝日 2019年3月15日号