それでも、なんとかようやく始業にこぎつけたのは、2018年12月。2カ月前だ。とにかく始めよう、細々と。きっと細々と。
ところが、だ。事件が起きた。成田空港に入る日本企業が、マリーモンドのバッグを持つ韓国人スタッフに所持を禁止した。それがネットでニュースになったのだった。
ニュースを読んだとき、私は、「ああ右翼にまた攻撃される! 始めたばかりなのにー!」と頭を抱えた。が、それは大きな間違いだった。なんと、そのニュース直後、マリーモンドジャパンは良い方向に炎上したのだ! なにこれ可愛い、応援したい、禁止するほうがおかしい! そういう若者が次々に、ほんと次々にネットで注文をしてくれたのだ。きっかけはウヨ的オジサン。でも、その声に反発する思い、怒る声が、この国にも少なくなかった。つながったのだ。
もちろんこの利益は全て、日韓若者交流のための企画と、教育事業に使われる。声をあげてくださった女性たちの声をつなぐ道のために、使われる。広告で美しく微笑まれていた金福童さんは1月28日に永眠された。闘ってきた多くの女性の声を、もっと聞くために。
※週刊朝日 2019年3月1日号