

俳優生活60年を迎え、著書『愛し続ける私』が話題になっている十朱幸代さん。これまで数多くの映画や舞台で活躍し、“恋多き女性”としても知られています。今だからこそ話せる、あの大物アイドルとの熱愛に作家・林真理子さんが迫ります。
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林:ご本の中には事実婚だった小坂一也さん(歌手・俳優)とのことも書かれていますけど、小坂さんって飄々としていて素敵な方でしたよね。
十朱:彼とは家族も公認のおつき合いでした。私の父は俳優だったけど、ほんとにふつうの家庭で、みんな仲が良かったので、そういう家庭が彼には居心地よかったんだと思います。
林:結婚するチャンスはいくらでもあったけど、やっぱり俳優のほうが楽しかったということですか。
十朱:私はまだ17歳になったばかりで、これから女優になるんだと意気込んでいるところでしたから。あの時代は結婚って束縛されたでしょ。それによって自分が目指してるものが半減されちゃうのが納得いかなかった。
林:そのころのスター同士のデートって、どういうところでするんですか。
十朱:当時のスターさんは大っぴらにはデートなさらなかったと思いますけど、私たちは隠さなかった。彼はスターだったけど、私はまだ駆け出しだったので、毎日のように外に食事に行ったり、買い物やドライブ、映画、ボウリングにゴルフ……。
林:十朱さんは、ものすごくおモテになったと思いますけど。
十朱:いえいえ、ぜんぜんモテないですよ。彼との恋愛が終わったのが32、33歳だと思うんですけど、その後の男性とのおつき合いがちょっと楽しかったですね。解放されて、また青春時代が来たような……。17歳からそれまで、彼一筋でしたから。
林:そんなに若いときからのおつき合いだったんですね。小坂さんがお亡くなりになって、もうどのぐらいですか。
十朱:何年になるんだろう。私がテレビドラマの撮影をしてるところにそのニュースが入って……。もう20年ぐらいになるのかな。
林:別れるにしても、籍を入れて子どもを2、3人つくっておけばおもしろかったな、なんて思いません?
十朱:いま考えればそうも思いますけど、子どもがいたら子どもに夢中になっちゃいそうなのよね。