林:これだけのお仕事はできなかったかもしれないですね。

十朱:と思って、それはあきらめました。

林:今の俳優さんのほうが働きやすくなってますよね。

十朱:今の俳優は、家庭も子どももすべてを手に入れていらっしゃって、それでも仕事はできる。俳優だけじゃなくて、ふつうのOLの方も結婚しても仕事ができますよね。私たちの時代とは状況が全く変わってますから。

林:俳優さんに求めるものも、今は銀幕のスターじゃないですもんね。身近にいるスターとして、お子さんがいてもマイナスにならないし。

十朱:かつては「イメージをこわしちゃいけない」みたいなことが要求されましたけど、今は自分をしっかり持ってその上で仕事に取り組むという方が多いですよね。

林:この本には、小坂さんとお別れになったあとの恋愛のことも書かれていますけど、特に去年亡くなった歌手の方とのことを思い切って書かれていて感動しました。あの方、ここにゲストに出ていただいたことがあるんですよ。

十朱:あ、そうなんですか。

林:感動するぐらいいい方で、そのことを私が対談のあとに書いたら、それがきっかけで「週刊朝日」でエッセーをお書きになったんです。

十朱:性格が素晴らしかったです。私がつき合った人は、みんな性格がいいんです。

林:あの方は十朱さんより10歳以上年下だったんですよね。そういう恋愛って、若い男の人を虜にする魅力が女性にあるんだろうなと思って、私たち女性は非常に肯定的に考えますよ。自分のことのようにうれしいんです。あのとき十朱さんはまだ40代ですよね。

十朱:そうです。テレビドラマの共演がきっかけで、なんか妙に気が合ったんですね。

林:このあいだ女性誌のインタビューで、その当時のことを「やっぱり最後は仕事。周りの人に祝福されない結婚はしちゃいけないと思った」とお答えになってましたね。

十朱:はい、そうですね。

林:結婚しても、みんな祝福したと思いますけどね。特に女性は喝采したと思いますよ。

十朱:結婚となると年齢差が引っかかりましたね。私はもう子どもができないかもしれないという年齢ですから。相手の方のご家族は、そういうことを待っていらっしゃる雰囲気でしたし。どちらの家族もみんな反対でした。

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