このドラマのゾンビには、人間だった頃の習性が残っている。ゾンビ化したコンビニ店員・神田くん(渡辺大知)は、「お客さんだよ」と告げると、白濁した瞳がキュルルンと正気に戻る。そして、神田くんにかまれてゾンビ化していくゲス夫が、最後につぶやく思い出。
「客がいつも俺たちしかいない定食屋に行こう。お前が好きな変なTシャツ売ってるあの店に行こうよ」
それは全部、妻みずほとの思い出だった。ゾンビに囲まれるという非日常に置かれたからこそ、見えてくる真実。
そう、すべてのドラマにゾンビがいたら、何事もスッキリするにちがいない。教師が生徒を人質にしなくたって、正々堂々と教室に立てこもれる。後妻業の女に狙われても、標的のじいさんがゾンビ化して死なず、遺産を奪われないから大丈夫。科捜研の男は、検視した遺体にかまれて終了。ハケン占い師も占ってる場合じゃない。
ドラマの冒頭では「いつ死んでもいい」が口癖だったみずほは、ふと気づく。
「私、なぜだか死にもの狂いで生きている。生きることにしがみついている、はっきりと」と。
人生で大事なことは、きっとゾンビが教えてくれる。
※週刊朝日 2019年2月22日号