こうした生前のサポートに対し、死後のサポートが死後事務委任契約。身寄りのないお年寄りが増え、近年関心が高まっている。死亡時の連絡や葬儀に関すること、入るお墓や遺品整理の手配、行政への手続きなどを頼む際に使う。
以上のような、高齢者を支える様々な制度についての注意点は何だろうか。
最も大切なのが、信頼できる相手を選ぶことだろう。それが難しいことを象徴するのが、認知能力の衰えた人を支える成年後見人等に就く人の変化だ。
制度発足当初の00年度は、配偶者・親・子・兄弟姉妹など親族が9割を占めた。しかし、直近(17年)は親族の割合が3割未満で、司法書士・弁護士・社会福祉士ら第三者が7割超。親族に財産を奪われる事件が多発し、第三者に就いてもらうケースが増えた。親族だからといって、安心して任せられるとは限らない。
「財産の管理や任意後見を頼む相手を選ぶ基準は、依頼人の話をよく聞いてくれることが一つの目安でしょう。司法書士や弁護士ら専門職に頼む場合、地域密着で活動している人や、知人が頼んだ人の評判を聞いて選ぶのもよい。依頼者と後見人の出会いは、お見合いのようなもの。依頼者が納得いくまで、ふさわしい人を探し出せばよいのです」
岡さんが仕事の拠点とする北九州市は、65歳以上が人口に占める割合の高齢化率が30.1%(18年3月末)。全国平均の28.0%を上回り、政令指定都市で最も高い。農村部より地縁や血縁が薄い都市部は、高齢者が孤立しやすい。「身寄りがなく、今後のことが心配」「認知症が進みそうで備えたい」など、北九州市の高齢者が求める法的サポートは各地で今後切実になる。
平均寿命が延び、体が元気な「健康寿命」や、十分な蓄えを持つ「資産寿命」を延ばす大切さが叫ばれている。と同時に、様々な手続きの契約当事者として判断能力があるかどうかも、個人差が大きい。お金の不安に保険で備えるように、財産管理や契約行為にも備えるしくみがある。
岡さんはこう振り返る。