高齢者の支援制度が必要な人に行き届くことは、ますます重要になっている(※写真は本文と直接関係ありません) (c)朝日新聞社
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遺言がない場合の法定相続のルール (週刊朝日 2019年2月8日号より)
遺言がない場合の法定相続のルール (週刊朝日 2019年2月8日号より)
死後の手続き、悩みや困りごとと具体的な対応策 (週刊朝日 2019年2月8日号より)
死後の手続き、悩みや困りごとと具体的な対応策 (週刊朝日 2019年2月8日号より)

 週刊朝日発の造語として、「終活」が世に出たのが2009年。10年後の現在、人生の最期にまつわる悩みはより多様化し、切実になっている。後を託す子どもがいない、認知症になりそう、死後に親族の手を煩わせたくない……。様々な不安や困りごとに備えるためには遺言書が有効だ。

【図版】遺言がない場合の法定相続のルールはこちら

 とはいえ、遺言を書くのは一大決心。先に延ばし続け、書かずじまいで認知症になったり、亡くなったりする人も多い。北九州市で「司法書士 のぞみ総合事務所」を構え、『子どもなくても老後安心読本』(朝日新書)を2月に出版する岡信太郎さん(35)は、こう助言する。

「遺言はまだ早いという方もいますが、人生100年時代の今、老後の人生設計をトータルで考えるとよいと思います。体が自由に動かなくなったときや、認知能力が衰えたときに備えるのと同様に、わが身に万一のことが起きた際の財産の分け与え方も一緒に考えておけば、安心して老後の生活を送れます」

 死後の手続きに備える方法は、遺言だけでなくいろいろある。こうしたしくみを知っていれば、困る前や悩む前に動ける。

 財産管理等委任契約は、足が不自由になって銀行のATMでお金をおろせなくなるといった場合に、お金の管理などを任せる。任せる相手は特に決まりがなく、親族、信頼する知人、弁護士、司法書士ら様々だ。依頼する側の認知能力が確かなことが前提となる。

 成年後見制度の一種である任意後見は、将来の認知能力の衰えに備える。認知症になったときのため、お金の管理や契約事項を任せる人を選んでおく。相手は自由に決められるが、認知能力があるうちに手続きすることが必要だ。

 同じく成年後見制度の一種の法定後見は、すでに認知症になった場合にとる手続き。任せる相手は自分で決められず、家庭裁判所が選ぶ。認知症の人の口座からお金をおろす際などに、銀行から求められて手続きする人も多い。

「法定後見は、認知能力の衰えでトラブルが起きた際の駆け込み寺のような位置づけです。衰える前の備えが任意後見、体が不自由になる前の備えが財産管理等委任契約。任意後見と財産管理の二つの契約を合わせて結ぶ依頼人もいます。また、これらの契約を前提に、月1~2回ほど定期連絡する見守り契約を結ぶケースもあります。定期的にやりとりすれば、依頼者の心身の状態の変化がつかめ、財産管理などをいつ始めたらよいかも見極めやすい。連絡をとりあうことで、お互いの信頼感も高まります」

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