大学選びに悩むのは、いつの時代も同じだ。だが、その指標が「偏差値の高さ」だとしたら、時代遅れだ。高偏差値の大学に通っても、その評価が額面通りに社会で通用しないのが定説となっている。「大学ランキング」(小社刊)の「学長からの評価」を見ても、時代の変化が表れている。1996年に最も高い評価を得たのは、慶應義塾大で、立命館大や東京大、京都大など国・私立の名門大学が上位を占めた。
しかし、2006年には様相が変わる。
1位の金沢工業大は、補習を開講して数学や物理などの基礎力を磨き、質問を受ける教員を配置する手厚い学習支援が評価された。立命館大や慶應義塾大などの高偏差値の大学も上位に入るが、桜美林大や立命館アジア太平洋大など、基礎教育や教養、国際教育に力を入れる大学が評価されるようになる。
その流れは変わらず、16年も金沢工業大がトップに立ったほか、国際教養大や共愛学園前橋国際大といった教養や国際教育に力を入れる大学がランクインした。背景には大学進学率の上昇がある。96年に33.4%だった進学率は06年には45.5%、16年には52.0%にまで上がった。大学ランキング編集者の小林哲夫さんはこう分析する。
「進学率が上昇する一方で、学力が足りない大学生も珍しくなくなった。だから基礎教育に力を入れ、力のある人材が輩出する大学が評価されるようになっている。その中でも、国際化や教養を学べる大学は特色があるとして高い評価を得ています」
高校の進路指導教師の評価からは、大学の異なる側面が見えてくる。アンケートした大学通信常務の安田賢治さんによると「偏差値が高くなくても、在学中に『鍛えてくれる』ことが期待できる大学が評価されている」という。
1位になったのはここでも金沢工業大で、14年連続のトップ。1年次からゼミに力を入れる武蔵大や、アクティブラーニングに取り組む産業能率大が、東大や早慶など超難関大学を抑えて上位に顔を出す。
「学習支援や就職支援など、学生をサポートする大学が求められている。こうした環境を整えるには、人件費や設備費が必要で、かなり大変。だが、それを達成できる大学が評価されています」(安田さん)