「前回の昭和地震から75年が経過しています。しかし、昭和の地震は南海トラフ地震としては規模が小さく、南海トラフの最北端の駿河トラフ(駿河湾~遠州灘沖)は壊れなかったのです。ということは、安政地震から165年間経っていますから、駿河トラフのある東側半分のプレートはより強力で大きなエネルギーが溜まっている可能性があります。宝永地震は東日本大震災と同じM9クラスでしたから、次の南海トラフ地震は最大級になる怖れもあります」

 ただでさえ巨大な地震被害を、さらに拡大させるのが長周期表面波(長周期地震動)だ。震源から遠くまで弱まらずに伝わっていくのが特徴だ。特に超高層ビルなどが被害を受けやすい。東日本大震災では、震源から770キロ離れた大阪府の咲洲(さきしま)庁舎が大きく揺れ、全棟でエレベーターが停止し、スプリンクラーなども破損した。

「南海トラフ地震が起これば、東京の超高層ビルやタワーマンションは相当揺れるでしょう。最上階だと片側5メートルの揺れ幅があることがわかっています。建物そのものは壊れなくても、ビル内で机や本棚、コピー機などOA機器が振り回されてガラスを突き破り、人間が落下してくる事態もあり得ます」(島村氏)

 いつ、どこに巨大地震が襲ってくるのか。残念ながら、予想するのはきわめて困難だ。しかし、未曽有の被害発生まで、刻一刻と近づいているのはまちがいない。十分な備えを怠ってはならないのだ。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事