折山さんはもう一つ、興味深い見解を示した。

「もしかしたら、(19年3月の)世界選手権が、紀平が世界女王になる最後のチャンスかもしれません。(台頭してきている)ロシアのジュニア世代の選手たちが来シーズン(19・20年シーズン)からシニアに上がってきて、4回転ジャンプをバンバン跳び、さらに現時点ではまだ高くはない演技のファイブコンポーネンツ(構成点)を高めたら、日本の選手たちにとって難しくなるでしょう。彼女たちの4回転ジャンプは本数が違います。もはや男子並みの構成になっています」

 紀平もすでに練習では4回転ジャンプに取り組み始めているという。ロシア選手たちの4回転ジャンプだけでなく、紀平の3Aでの躍進もあり、「他の選手たちも4回転や3Aをやらなくちゃ、世界のトップに立てないという意識に変わっているはず」(折山さん)という。

 だが、女子選手には成長期に伴う体型変化への対応も、重要な要素だ。元フィギュアスケート日本代表の安藤美姫さんは15歳の頃は4回転ジャンプを跳んでいたが、成長期による体型変化の影響からか、17、8歳になってジャンプに苦しんだ。また、ロシアのトゥクタミシェワが、過去に同様の経験をし、今シーズン数年ぶりに復活を見せたところだ。

「ロシアのジュニアの子たちが来年も飛べるかというと、やはり体の変化はこれからあるでしょうし、比較的不確定要素です。ただし、あれだけジャンプが跳べていますし、日本の選手たちはやっていかないといけないでしょう」

 男子はすでに20年以上前から4回転ジャンプ時代に突入していたが、その波がついに押し寄せてくる。紀平たち日本の選手たちも挑戦していかざるをえないのか。渡部さんは心配する。

「大技が本当にこのスケート界にとって必要なのでしょうか。他のところで差をつけるとかにしていかないと選手がつぶれてしまう。良い選手たちが消えていきます。個人的な意見ですが、紀平や阪本がそこを無理して挑戦する必要はないと思います。大技を挑戦する前に、今持ってるものを磨いて、スピンやステップを磨いていき、点数を稼げますし勝てる可能性があると思います」

 それでも一度上がってしまったハードルが、下がることはないだろう。紀平たちにとっては大変な時代である。(本誌・大塚淳史)

※週刊朝日オンライン限定記事

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