矢野顕子のニュー・アルバム『ふたりぼっちで行こう』が楽しい。8人のミュージシャン、3組のグループとのコラボレーションだ。過去に共演した面々だけでなく、初の顔合わせも。内容も、オリジナルの新曲、ライヴのみで未録音だった曲、カヴァー曲など盛りだくさんだ。
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矢野はこれまでも数多くのミュージシャンとレコーディングやライヴで共演してきた。2006年に出したデビュー30周年記念アルバム『はじめてのやのあきこ』では、小田和正、忌野清志郎、槇原敬之、YUKIら。『あなたと歌おう』(10年)では森山良子、『Get Together―LIVE IN TOKYO』(11年)や『ラーメンな女たち―LIVE IN TOKYO―』(17年)では、ジャズピアニストの上原ひろみ。デビュー40周年記念公演でも、大貫妙子や奥田民生らとステージに立った。
今回の新作の幕開けは、リード&キャロラインとコラボした「When We’re In Space」。軽快でどこか懐かしいピコピコのテクノポップだ。宇宙への思いを歌う矢野は、胸のときめきを抑えられない少女のようにとてもキュートだ。作曲は矢野。作詞、編曲のリード・ヘイズは米ニューヨークの矢野宅の隣人だ。リードが語るには「エレベーターに乗り合わせる度に音楽や宇宙、クラフトワークについて話す間柄」という。
2曲目は、THE YELLOW MONKEYの「パール」のカヴァー。イエモンの吉井和哉とは初共演だ。矢野はかねてこの曲をリアレンジしてきたが納得できず、吉井との共演で再アレンジ。吉井は“矢野さんがカヴァーしたナンバーは、もう矢野さんの曲になっているわけですから、言ってみれば僕がコピーする感覚。「俺が作った曲なのに、なんでコピーしてるんだ」(笑)っていう嬉しさと緊張感”を覚えたという。
YUKIとのコラボによる「バナナが好き」は、矢野の40周年記念公演の際に作られた。いつもはメロ先のYUKIが、矢野のバナナへの偏愛を描いた詞に曲をつけた。ほのぼのとしたくつろぎを覚える曲だ。